[FX] 単純な高値安値のブレイクアウト後、どの程度戻すのか、そして優位性は?

今回の内容

前回の記事では単純な高値や安値のブレイクアウトには有効性がないということを検証してみました。今回は前回の結果を少し掘り下げて、ブレイクアウト後、どのくらい戻ってくるのか?そして戻りを待った場合の有効性はあるのか?といったところを見ていきたいと思います。時間足にもよりますが、7割程度はブレイクアウト位置まで戻ることが分かりました。一方でブレイクアウトの基準となった価格まで戻りを待たずにエントリーした場合より、基準となった価格まで戻りを待った方が、期待値がマイナスから0になることが分かりました。また、単純に戻った瞬間にエントリしても優位性はあまりなさそうで、やはり下位足でのトレンド転換などと組み合わせることが重要であることが示唆されました。

ブレイクアウト後、7割戻ってくると分かっていれば安心して戻りを待てるのではないでしょうか。

データはUSDJPYを用いており、検証対象の時間足は1分、5分、15分、1時間、4時間、8時間、日足、週足、月足です。データを取得できるだけ取得して調査した結果、用いたローソク足の総数は48万8000本となりました。

※この記事は投資助言や勧誘にあたるものではありませんので、投資はあくまで自己の判断のもと、自己責任で行ってください。

検証について

まずは今回の検証について説明します。①から③は前回の通りで今回は④を追加しています。

①安値や高値をローソク足の終値が超えた時をブレイクアウトとして、その後の値動きを調査。
②高値を上方向にブレイクアウトした場合、ブレイクアウト時の安値と高値の幅分ブレイクアウト方向に先に到達するか、それとも逆に安値側に先に到達するかを調べた(安値を下方向にブレイクアウトしたときは高値と安値の幅分だけ下方向にのびるか)
③計算の都合上ブレイクアウトからローソク足100本分たってもどちらにも到達しない場合はレンジ内として処理し、レンジ内、上方向到達、下方向到達の3つに値動きを分類した。
④ブレイクアウト後、ブレイクアウト方向に到達した場合、ブレイクアウトから目標到達までに最大でどのくらい戻しているかを確認した。ブレイクアウトポイントまで戻った時を戻り率0%で表現し、安値が-100%, 目標値が100%とした。

※データはUSDJPYの1分、5分、15分、1時間、4時間、8時間、日、週、月のローソク足とし、1分足から1時間足までは99999本のローソクを取得している。4時間足以降で取得したローソク足の数は減少しており、月足では615本のローソク足となっている。

①~③までの出力結果をおさらいしておくと、下の図のようになっています。下図2つのうち上側は上方向のブレイクなので、各時間足の3本の棒グラフのうち真ん中のケースについてみていきます。下側は下方向のブレイクなので、右側のケースについてみていきます。

高値を上方向にブレイクした場合の結果。最上段左から1分足、5分足、15分足、中段左から1時間足、4時間足、8時間足、下段左から日足、週足、月足。
三本のグラフは左からレンジ内、高値到達、安値到達
安値を下方向にブレイクした場合の結果。最上段左から1分足、5分足、15分足、中段左から1時間足、4時間足、8時間足、下段左から日足、週足、月足。
三本のグラフは左からレンジ内、高値到達、安値到達

結果

 1分足から8時間足まではかなり似た分布になっており、時間足に関わらず再現性があるように見受けられる。時間足が長くなるほど、戻さなくなる傾向が日足までは見えるが、週足では戻さずに行ってしまうケースが逆に減っている。月足はデータ数が少なすぎてなんとも傾向をつかみにくいが、戻す場合の方が多いという印象。上方向ブレイクにしても下方向ブレイクにしても4時間足までは7割以上戻っている。戻りの平均は4だいたい-20%程度というデータとなった。

上方向ブレイクにおいて、各時間足において最大どのくらい戻ったのかを示すヒストグラム。横軸の0がブレイクアウトポイントまでの戻り、-100が安値までの戻りである。値が正のケースはブレイクアウトポイントまで戻さなかったケースに相当。
下方向ブレイクにおいて、各時間足において最大どのくらい戻ったのかを示すヒストグラム。横軸の0がブレイクアウトポイントまでの戻り、-100が安値までの戻りである。値が正のケースはブレイクアウトポイントまで戻さなかったケースに相当。

実用的な話

とりあえず、ある地点まで戻ってきたら闇雲にブレイク方向にエントリするという案を考えてみる。その場合、勝率、損益率(損益比)、期待値 は以下の通りになる。期待値は今回損切した際に失う損失が一定割合(例えば1%)となるようにロットを調整したものとして簡易的に表している。

  • 勝率 = ((目標に到達したケース数)- (ある地点まで戻ってこなかったケース数))/(目標未達を含むブレイクアウト全体数)
  • 損益率 はエントリする「ある地点」と損切である安値、そして利確ポイントである目標地点の関係で求められる。例えば損益率2の場合、利益2:損失1としている。
  • 期待値 = 勝率* 損益率 – (1-勝率)*1 ※ここで勝率は0から1の値をとる。

以下の表は各戻し率でエントリした場合の結果である。戻し率が高いところでエントリすれば勝率はあがるものの、損益率が下がってしまうという関係でほとんど優位性がないことが見受けられる。戻し率20%まで待てば少し緑が増えるかというところはあるが、戻し率0%から-20%くらいまではどれも似たようなものに見える。前回の記事でも述べたが、週足の上方向ブレイクに関しては傾向から外れており、ここにエッジがあるといえばあるという結果かと思う。(実際にトレードしたいかどうかは別として)

上記の結果ではある価格までもどってきたら闇雲にエントリをしているので、下位足がトレンド転換したらエントリなど、マルチタイムフレームを活用すれば結果は少し改善するとは考えられる。次は実際のチャートから上手く行く例と行かなかった例を見てみようと思う。

実際のチャートで考えてみた場合

上位足と下位足組み合わせてみた場合を考えてみる。今回は4時間足で高値ブレイクした後の動きを5分足で見ていく。
これまでの結果から、少なくともブレイクアウトポイントまで戻ってきてくれないと優位性はむしろマイナスなのは明らかなので、ブレイクアウトポイントまで戻った後、下位足でトレンド反転したらエントリした場合を考える。以下チャートは適当に選んだ4時間足のチャート。記事に載せられる例の数はたかが知れているし、何百もある例からたまたま2つ抜き出しただけなので、こういうパターンもあるのだなという感じで見て頂きたいです。単純な安値高値のブレイクよりも上位足のトレンド転換後のタイミングなどのほうが優位性は高いです。

まず値幅が取れた例から見ていく。22:00から1:59までの足で上方向ブレイクが確定している。高値は1:40くらいについている。その後、5分足でトレンド転換したのは下図のエントリーの所。最小の損切幅としては5分足で再度トレンド転換してしまう赤色の矢印の所となると思う。この辺りは自由に検証して頂けるとありがたいです。その後、このパターンでは赤色矢印の安値を割ることなく、利確ポイントまで行っている。

次に値幅が取れなかった例を見ていく。18:00-21:59の足で上方向ブレイクが確定。ほとんど高値のライン際であり、その後少し押す形になったものの、5分足は上昇トレンドを継続している形となっている。従って、その次の高値更新(ローソク足実体上抜け)でエントリー。その場合、最小の損切は赤矢印のところになるかと思う。その後、順調に上がるものの、2:00ごろの急落で安値を下抜けしている。損切を上げればプラスで終われたが、最初のケースでは損切を上げてしまうと取れる値幅が減少する。

あとがき

今回は安値高値の単純なブレイクアウト後にどのくらい戻してくるかについてみてみました。従来から言われている通り、戻りを待ってからエントリーをした方が期待値がよさそうなことはデータからわかったかと思います。また、こちらも従来から言われている通りですが、単体の時間足で見るよりも上位や下位の足と組み合わせてトレードする方がよさそうですね。

最後までご覧いただきありがとうございました。